「リーダーは生まれながらじゃない、なるものだ!」リーダーシップ理論の歴史を知っておこう

リーダーシップ

「リーダーシップ」とは何か?

 この問いは、古今東西変わらず今でも論じられている、非常に古くて新しいテーマです。「リーダーシップ」は学問として古くから研究されており、その起源はなんと紀元前から着目されています。 有名どころでは、唐の太宗(李世民)とそれを補佐した名臣たちとの政治問答集である『貞観政要』、孔子の『論語』等の言葉は、現代でも十分通用する普遍的なアイディア・考えとしてとして多くのビジネスリーダー達が参考にしています。現代のリーダーシップ理論は1900年代から研究されていますが、本記事で、このリーダーシップ理論の変遷を確認し、現代のリーダーシップについて考えましょう。


貞観政要 (ちくま学芸文庫) [ 呉 兢 ]

リーダーシップ特性論(古代~1940年代)

・古代ギリシャ時代から1940年代頃まで長く主流だったのがリーダーシップ特性論です。この理論では「偉大なリーダーには生まれ持った資質・才能があり、共通する特性がある」という前提によって、過去の優れたリーダーが持っている特性を明らかにしようとしました(アレクサンドロス大王の判断力・洞察力、諸葛亮孔明の政治手腕、・・・)。

・特性理論でリーダーシップを発揮できる主要な判断ポイントは以下の項目です。

  • 知性:学識や判断力、創造性などの知的営みの能力が高い。
  • 行動力:判断力、協調性、社交性、適応力など状況に応じた行動の的確さ。達成志向、根気、忍耐などの最後までやり遂げる力がある。
  • 信頼感:自信、責任感に溢れメンバーとの関係性を構築できる。

・しかし、そもそも人々の特性を、測定・評価をすることが難しく(十分に出来ない)、さらにその特性を持っているが成果を出せていないリーダーのケースなどもあり、理論的な限界を迎えました。「優秀なリーダーを決める要因は、才能以外の影響が大きい」ことが明らかになりました。

リーダーシップ行動論(1940年代〜1960年代)

・リーダーシップ特性論に対する反動的な立場から、リーダーの行動スタイルからリーダーシップを捉えたのがリーダーシップ行動論です。1940年代後半、戦後アメリカでは人材が不足し、多数のリーダーを発掘・育成する必要から「リーダーを作り上げるには行動がある」という前提に立ち、どのような行動が有効なリーダーを作り上げるのかが焦点になりました。

・しかし、この理論も、リーダーの行動だけが全ての成果に影響されるわけではないため、その時点で有効だったことが時間の経過や状況の変化に関わらず有効であるとは限らない、などの問題点が指摘され、この理論も淘汰されました

リーダーシップ条件適応論(1960年代〜1980年代)

・1960年代、置かれている状況が異なれば、求められるリーダーシップも変わって来るはずである、というリーダーシップ条件適応理論が登場します。この理論では「全ての状況に適応される、唯一絶対のリーダーシップ・スタイルは存在しない」という前提に基づき、どんな人でも適切な状況に置かれればリーダーシップを発揮出来るという立場を取り、現代でも十分通用するものです。

この条件適応理論は、行動理論に比べて非常に柔軟性の高い理論です。リーダーシップのありかたは一様ではなく、状況や構成員の性質に合わせて変えていく必要があるという点に着目しているのが最も大きな特徴です

・代表的な条件適合理論として挙げられるのが、R.ハウスによって提唱された「パス・ゴール理論」です(こちらは別途記事を作成します)。

・条件適合理論によって、自分の周りの環境に応じて、リーダーは行動を変える必要があること、常に優秀である普遍的なリーダーは存在しない、ということが言えます。たとえ優秀なリーダーがいたとしても、会社も周りの環境に応じて変革しないと、その優秀なリーダーは優秀でなくなる、ということが言えます。

・常に優秀なビジネスリーダーであるためにはどうあるべきか?それは、環境によって行動を変えられることができ、柔軟な対応・思考が出来る人ではないでしょうか。

コンセプト理論(様々なリーダーシップ理論)(1980年代〜)

・この「コンセプト理論」は現代のリーダーシップ理論の主流と言えます。条件適合論を踏まえた上で、さらに具体的なビジネスシーンを想定したものです。

・たとえばカリスマ的リーダーシップ理論変革的リーダーシップ理論があります。急激な経営環境の変化によって市場の動きがかつてないほど急変し、既存の価値観や命令体系では企業が継続的に成長することが不可能になってきた、VUCA World下において、有効で必要とされる理論です。

・カルロス・ゴーン(元日産CEO)は典型的なカリスマ的リーダーです。彼の掲げるビジョンとそれを実行する能力(変革的リーダーシップ)で、倒産の危機にあった日産を見事に復活させました。

シェアド・リーダーシップ

 

 シェアド・リーダーシップは、最近の主流となるリーダーシップ理論の一つです。組織内・チーム内のの業務に関わっているチームメンバー一人ひとりが、それぞれリーダーシップを発揮する事です。リーダー経験者やリーダーの資質のある人、または役職上位者が、率先してチームを引っ張るのではなく、メンバー全員が目標達成のために考えて動きます。

 このシェアド・リーダーシップを取り入れることで、メンバーの全員が自立し、事業に対して責任感を持って当事者意識をもって業務遂行することが期待されます。

まとめ:リーダーシップは多様・そして臨機応変に

・リーダーシップの典型的なイメージは「グループ内で先頭に立って引っ張っていく」「一人のカリスマによる変革」というイメージがあるかもしれませんが、それは違います。今まで見てきたように、リーダーシップ理論は時代毎に変化・改良を重ねてきました。

・明日どうなってるかわからない、変化のスピードがめまぐるしいこの現代において、ビジネスで成功して生き残っていくのは、変化に対応出来る会社・人のみです。その時に応じたリーダーシップは何か?常に考えつづけることが必要ですね。


貞観政要 (ちくま学芸文庫) [ 呉 兢 ]

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