【5分で理解!】日本型人事制度(雇用慣行)の特徴

人事関係

 日本の人事制度(雇用慣行)は、世界的に見るとかなり特殊な特徴を持っています。すなわち、「年功序列」・「終身雇用」・「新卒一括採用」・「企業内組合」の4点です(年功序列、終身雇用、企業内組合の3つで日本型人事制度の「三種の神器」とも呼ばれます)。 近年、これらの制度がもう通用しない、時代遅れになったという声が聞えるようになりましたが、この記事では、日本型人事制度が成立したは背景やその特徴を解説していきます。

  1. 日本型人事制度の発展の背景
  2. 各制度の特徴
  3. なぜ日本型人事制度が時代遅れなのか?

1.日本型人事制度の発展の背景

 高度経済成長期(1950年代~1970年)からバブル崩壊前後にかけ、年功序列、終身雇用、新卒一括採用(または企業内組合)という日本型人事制度によって企業は発展し、また社員自身も恩恵を受けてきました。戦後、日本企業の大きな問題になったのが従業員の確保です。企業の規模を大きくしていけば、従業員を多く雇う必要があります。そこで考えられたのが、従業員の将来を安心させる終身雇用、年功序列といった制度でした。企業は従業員に対してあなたやその家族をずっと面倒みてあげるから、その代わりずっと働いてくれ(ソルジャー=社畜になってくれ)。しかし給料は毎年上がっていくから安心してくれ。だからとりあえずうちでずっと働いてくれ。という交換条件のような仕組みが作られました。加えて、企業が従業員をさらに洗脳しやすくなるように生まれた言葉が「滅私奉公」、「愛社精神」でした。24時間働けますか?というCMがバブル期に放送されていました(今で考えるとワークライフバランスもあったもんじゃない、信じられない言葉ですね)。日本人には儒教の精神・教えの素地がありましたので、年功序列という精神は、目上を敬う精神とあいまったのかもしれません。

 念のため、以下で各用語について解説しておきます。

2.各制度の特徴

(1)年功序列

 勤務年数が上がるにつれて能力が高くなり、昇級や昇給で給与が上がっていくシステムです。ひとつの会社で数年働けば、他の会社で新しく働き始めるよりも高い給与を獲得することが出来る仕組みになっており、年功序列制度は労働者の転職を抑制します。本制度では若い社員の給与は低めであり、その後たとえその社員の生産性が落ちたとしても、後年になってからその見返りとなるだけの高い給与が支払われます。この制度は、労働者にとって最初に就職した企業で働き続ける強い動機となります。

(2)終身雇用

 正社員であれば、定年まで解雇しないことが前提の雇用制度です。会社の業績や個人の成績に関わらず、定年まで雇用が保証されるため、、社員にとってはリストラの心配がなく、安心して働ける点で、働き手にメリットの大きい制度です。

(3)新卒一括採用

 高度経済成長期では、労働力の確保がファーストプライオリティ、最重要課題でした。毎年右肩上がりで成長を続けていくことが想定されたため、多くの働き手を確保することイコール企業成長という関係が成立していたのです。新卒一括採用を行い、勤続年数の積み重ねと共に昇級・昇給させ、定年まで雇用する「終身雇用」をかかげ、働き手を確保していたのです。

(4)企業内組合

 企業に所属する従業員によって結成された労働組合のことをいいます。欧米では業界や業種別に労働組合が結成されているのに対し、日本では企業が社内に労働組合を持っています。法律(労働組合法)により、企業別組合の運営が保障されているため、労働条件の改善・維持や、不当な解雇の撤回の申し入れ等が可能です。

(5)おまけ

 冒頭で日本の人事制度(雇用慣行)は世界的に見るとかなり特殊な特徴を持っていると記載しましたが、では欧米はどうなっているかというと、職能給(日本型)と職務給(欧米型)という賃金形態の説明が必要になります。これは別の記事で説明します。ここでは簡単に言いますが、欧米には年功序列・終身雇用という考え方はなく、特に米国では、Employment at Will(随意雇用・随意契約)という考え方がベースです。簡単に言うと、「いついかなる時でも理由の有無に関わらず、雇用主も従業員も雇用契約を解消できる」という考え方です。ただしこれも別の記事で解説しますが、アメリカの雇用法では「差別」を明確に禁じていますので、いつでも自由に従業員を解雇できるわけではありません。また、Job Description(職務記述書)で採用から評価を行い、中途採用(通年採用)が一般的です。

3.なぜ日本型人事制度が時代遅れなのか?

 2.で解説したこれらの制度は、高度経済成長期からバブル期には機能していましたが、近年の時代の変化と共に、維持することが難しくなってきています。

 経済がグローバル化し、企業情報活動がより多様化・複雑化し、人口が減少に転じ、労働者の高齢化など、もはや昔ながらの人事制度は上手く機能しなくなっている、と言っても過言ではありません。

  具体的には、働き方の変化・長時間労働が前提の就業環境・新卒一括採用・グローバル化、といった変化があります。以下順番に見ていきましょう。

(1)働き方の変化

 これまでの働き方に関する考えが、近年大幅に変わってきています。結論から言うと、男性中心の働き方から、共働きという働き方への変化です。

 もともと、終身雇用や年功賃金制度は、従業員の長い人生や生活を保障するものと言えますが、それと引き換えに「仕事の内容、労働時間・働く場所を限定することなく、会社命令に従い指示されたことに注力することが求められる、いわば『男性中心的な働き方』と言うことが出来ます。

 このような男性中心の働き方が主流だった当時の日本において忘れてはならないのは、そのような男性の陰に隠れていた女性達です。このような働き方は、家庭や家族との生活を支える専業主婦の存在なくしては、決して存在し得なかった、という事実です。無制限の長時間労働や全国転勤を受け入れざるを得ない働き方であるがゆえ、日常の家事・育児は必然的に妻に委ねることになっていました。

 しかしながら、バブル崩壊後は経済成長が持続的に鈍化し、専業主婦の数は減少し、代わりに「共働き」が増加してきたのが第一の変化です。共働きが増えたことにより、転勤することの制限や勤務地限定といった制度も生まれています。

(2)長時間労働が前提の就業環境

 ポイント2点目は、未だ深く根付いている「長時間労働」という慣習です。2019年4月から法改正(改正労基法)がありましたので(別記事で解説します)、超過労働は原則月45時間、年360時間の限度時間が法律に罰則付きで規定されました。特別条項についても、時間外労働は単月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間未満(いずれも休日労働含み)という労災認定基準の項目が盛り込まれたほか、年720時間、月45時間を超える特例は6か月までという規制になっています。

 長時間労働は、団塊世代の高年齢化と共に増加が見込まれている「介護」との両立を阻害する不安要素でもあります。「残業・転勤なんでもOK」という日本型人事制度のままでは、潤沢な労働力の確保が、今後(今も)かなり難しいと言えます。

(3)新卒一括採用

 白紙の学生を一斉に4月に採用し、企業独自の色に染め上げ、愛社精神を受け付けて定年まで働いてもらう、それが日本の制度でした。しかし、今後は日本における新卒一括採用の重要性は次第に薄れ、大手企業を中心に中途採用の割合が5割を超えてくるのが一般的な情勢になってくるでしょう。若手を育てる時間とコストをかけるよりも、即戦力の人材を中途で採用しようとする考え方が、多くの企業で主流になってくると思われます。

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