文化・国民性の違いを定量化したホフステッド指数

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文化・国民性の違いを定量化したホフステッド指数

1.ホフステッド指数とは何か

(Hofstede’s Cultural Dimensions)

ホフステッド指数(ホフステッドの文化的次元理論)は、各国別の社会性や国民性を6つの指標で表した指標のこと。オランダの社会学者ホフステッドが開発しました。彼はアメリカIBMの世界40か国11万人の従業員に行動様式と価値観に関するアンケート調査を行い、1980年にその国の文化と国民性を数値であらわしました。

2.6指標と元データ

・ホフステッド指数は6つの指標で構成され、それぞれ

1.PDI(上下関係)

2.IDV(個人主義)

3.MAS(男らしさ)

4.UAI(不確実性回避傾向)

5.LTO(長期主義的傾向)

6.IND(快楽主義VS禁欲主義)

この6指標で、国別の文化・国民性の違いを定量的なデータを使って説明したのがホフステッド指数です。

・元データはこちらのサイト。

The dimension scores in the Hofstede model of national culture can be downloaded here
These files contain the data matrix with dimension scores obtained from the various studies that contributed to the Hofstede model of national culture.

・約110の国および地域のデータがありますが、6指標全てデータが揃っているのは、65ヵ国のみですので、以下のデータはこの65ヵ国分となります。

・因みにこちらでは国を指定してホフステッド指数の比較が出来ます。英語ですが直感的に操作出来るので覗いてみると面白いと思います。

Country comparison tool
Please select a country in the dropdown menu below to see the values for the 6 dimensions. After a first country has been selected, a second and even a third co...

3.ホフステッド指数で見る日米比較

(1)PDI(Power Distance Index)上下関係

・日本(54)は43位(65ヵ国中)で上下関係はこの中では中より下。先輩後輩や部活や会社の上下関係等、年下・年上を必要以上に気にする国民性と思ってましたがちょっと意外な結果です。

・一方米国(40)は50位ですが、これも意外な結果でした。米国南部で働いていたころは上限関係はあまり関係なく皆分け隔てなく接していましたが、調査対象がIBMの従業員ということで、西海岸や北部のエリート層は、さすがに上下関係は気にするということでしょうか。南部だけでアンケートを取るとまた違った結果になるのでしょう。

・目を引くのはマレーシア(104)が2位という結果です。マレーシアでは、一般的に役職に対する階層意識が強く、上下関係の縛りの中で仕事をしているといいますが、それを如実に表す結果が出ています。マレーシアでは、ビジネスの場面に限らず目上の人を敬う傾向が日本よりも高く、役職レベルの異なる者同士でミーティングを行うことも敬遠されているとか。

(2)IDV(Individualism)個人主義

・日本(46)は30位(65ヵ国中)で個人主義は平均少し上です。アジア勢が軒並み個人主義傾向が強い中、日本とインドは個人主義的傾向が強いと出ています。調査対象(外資系に勤める日本人)の影響が強いと思いますが、一方で自分に関わりのない人にはとことん冷たい日本人のため、実は個人主義的傾向は強いというのは理解出来る結果です。

・一方米国(91)は1位です。さすが自由の国アメリカ(笑)。他民族国家であるアメリカですが、私が3年間住んだ印象だと、誰とでも(知り合い出ない人=Strangerでも)気さくに話をしますが、いざ本当に困ったときに手を差し伸べてくれるかと言うとそうではない印象です。良く言えば、人に寛容で優しく他人に干渉しないと言えます、いざとなったら自分の力でなんとかするしかない、個人主義的傾向が最も強いのは納得です。

(3)MAS(Masculinity)男らしさ

・日本(95)は2位(65ヵ国中)で上位で興味深い結果です。調査は1970年代ですから、男は外で稼ぎ、女は家を守るという典型的な考えが主流の時代ですので納得感はあります。ただし最近はジェンダーフリーやLGBTという言葉が浸透し、男らしさ・女らしさは不要と言った考え方が受け入れられるようになってきましたので、今調査すればもっと順位は下がるかもしれません。

・一方米国(62)は16位と平均よりは上といったところ。男は家族を守り、持ち家のDIYに休日はBBQで男が肉を焼く、というのが典型的なアメリカ人の男性像ですが、これも最近は異なるようです。

(4)UAI(Uncertainty avoidance index)

・日本(92)は10位(65ヵ国中)で上位です。日本人の不確実性回避傾向が高いことは、納得感のある結果です。

・一方米国(46)は54位と下位グループに属します。アメリカ人は貯金をせずに給与をすぐに使いがちと言いますが、まさにこの行動様式に合致する結果だと思います。

(因みにアメリカではBi-weeklyといって、2週間に1回のペースで給与が支払われるのが一般的です。2週間でもらった給与をだいたい使い切るようでス…本当かどうかわかりませんが…)

(5)LTO(Long-Term Orientation)長期主義的傾向

・日本(88)は3位(65ヵ国中)で上位です。加えて、韓国(100で1位)、台湾(93で2位)、中国(87で4位)と面白い結果です。アジアの中では先進国群の方が長期主義的傾向が高いと言えそうです。

・一方米国(26)は52位と下位グループに属します。先の不確実性回避傾向で触れたように、貯金をしないアメリカ人を如実に表している気がします。北米・中南米エリアで見ても、全て平均以下になっており長期主義的傾向は見られないようです。

・欧州に目を向けると、ドイツ(83)が中国についでの5位です。質実剛健、合理主義で堅実なドイツ人の国民性が良く出ています。

(6)IND(Indulgence vs restraint)快楽主義vs禁欲主義

・日本(42)は38位(65ヵ国中)で平均並み。

・一方米国(68)は14位と上位グループに属します。

・上位5位は全て中南米勢が締めているのが興味深いです。歴史的・宗教的側面からも説明可能に思います。

4.まとめ

・文化、国民性の違いをホフステッド指数から6指標を見てきました。地域別で説明出来たり、歴史的、宗教的経緯からも説明は可能ですが、これほど国と地域によって考え方が変わるのは大変興味深いです。

・ホフステッド指数は企業の異文化理解研修やグローバルマインド研修のような場面で説明されることが多いですが、この結果は1980年のものですので、今同じような調査をした場合に結果がどう変わってくるのか興味深いですね。本指数で各国の国民性を少しでも概観し、コミュニケーションの齟齬が起こらないように活用出来ると、互いの理解も進むように思います。


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