Erin meyer(エリン・メイヤー)の『異文化理解力』~外国人と一緒に働く時に気をつけること~

ビジネス

異文化理解力 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養 [ エリン・メイヤー ]

 海外旅行した際に、「日本と比べてここが違う・あれが違う・こんな考え方をするんだ」とカルチャーショックを受けた経験を持つ人は多いと思います。

ビジネスの場でも同様に、人種や国籍の異なる方と働く機会のある人は、日本人の仕事の進め方との違いに、時にはやきもきするかもしれませんし、無用な誤解からトラブルに発展する可能性もあります。

 異文化理解に関する研修や多様性に関する勉強の一助として、Erin Meyer(エリン・メイヤー)氏の『The Culture Map』(日本では『異文化理解力』で出版)で紹介されている、「8つの指標」を理解すれば、海外と日本のビジネス文化の違いや考え方、注意点が見えてくるので紹介します。

8つの指標

 日本を含む66カ国のビジネス文化を8つの指標に基づいて分析、マッピングしたものがカルチャー・マップです。

専門分野における豊富な研究結果を基にカルチャー・マップを考案したErin Meyer(エリン・メイヤー)氏は、フランスに拠点を置く国際的なビジネススクールINSEAD(インシアード)で異文化マネジメントを専門とする准教授です。

(1)コミュニケーション(Communicating)

  • 「コミュニケーション力が優れている」と言った場合、その答えは社会にによって大きく異なります。Erinは、Low-context(ローコンテクスト)文化と、 High-context(ハイコンテクスト)文化の2つで説明します。
  • Low-context文化(アメリカ、カナダ、オランダ、ドイツ等)での優れたコミュニケーションは、正確かつシンプル、明快で系統立ったものであり、言葉が額面通りに理解され、明確にするために繰り返すことが重んじられます。また、伝えたいことを書き記すことも重視されます
  • アメリカやカナダ等では、はっきりと言葉で伝える努力が必要になってくるということです。
  • High-context文化(日本、韓国、中国、インド、シンガポール、フランス)では、コミュニケーションが洗練されていますが、捉えにくいという特徴があります。
  • 言葉には含みがあり、何層にも重なっていると言われます。しばしば、言葉ははっきりと表明されないことが多く、書き記されることが少ないと言えます。また、理解が解釈に委ねられることが多く、どの程度行間を読み込めるかによって、理解が変わってきます。
グローバルビジネス下でのPoint
  • グローバルなビジネス下では、各人の価値観・経験・知識・倫理観・宗教観・歴史観等、全てが異なると言え、互いの国や文化に対する先入観や偏見なども合わさり、言ってみれば究極のLow-context文化 であると言えます。
  • その中におけるコミュニケーションで注意すべきは、「言わなくても察してよ・・・」では、全く相手に伝わらないため、言いたいことを明確に主張する必要があるでしょう。

(2)評価(Evaluating)

  • 次に「評価」です。Erinは、フィードバックの方法を以下の面から説明しています。
  • 直接的なネガティブ・フィードバック(Direct negative feedback)では、単刀直入に、ネガティブなメッセージをそのまま伝え、ポジティブなメッセージで和らげることはしません。「間違いなく不適切だ」といった直接的な表現が使われます。
  • 直接的なネガティブフィードバックが好まれるのは、ロシア、オランダ、ドイツ、イスラエル、フランス、デンマーク、スペイン等でその傾向が強いようです。
  • 間接的なネガティブ・フィードバック(Indirect negative feedback)では、柔らかく、さりげなくネガティブなメッセージを届けます。「やや不適切だ」といった間接的な表現が使われます。
  • 間接的なフィードバックが好まれるのは、日本、中国、韓国、タイ、インドネシア、サウジアラビア等でその傾向が強いようです。
  • なお、以外に思われると思いますが、アメリカ、イギリス、カナダは、丁度中間位に位置しています。下図参照。フィードバックの際は、ある程度の配慮が必要ということが言えますね。
グローバルビジネス下でのPoint

日本人(間接的なネガティブ・フィードバックを好む)が、ロシアやドイツ人(直接的なネガティブ・フィードバックを好む)と接する場合、気を遣って相手の欠点を伝えないでいると、それが逆に不誠実、と受けとらえるかもしれないことを頭に入れておくとよいのではないでしょうか。

(3)説得(Persuading)

  • 人を説得する際、「原理」を根拠にするか、「事例」を根拠にするか
  • 原理優先(Concept-first)」は演繹法的な思考。すなわち、具体的な一つの結論を得るために、あらゆる要素や根拠に基づいて結論を導き出す手法です(結末が決まっていない)。
    • 演繹法: 事実A + 事実B →結論
    • 原理優先の人たち(イタリア、フランス、ロシア、スペイン)は、最初に理論や複雑な概念を検討してから、事実や発言、意見を言うように訓練されています。
    • 各状況の奥に潜む、概念的原理に価値が置かれているようです。
  • 事例優先(Application-first))」は帰納法的な思考。すなわち、具体的な一つの結論から、一般的に考えられる法則を得るために推論する手法です(結末を先にあり、なぜその結末に至ったのかを説明していく)。
    • 帰納法: 結論 → 法則
    • 事例優先の人たち(アメリカ、カナダ、オーストラリア)は、事実・発言・意見を出した後で、それを裏付けたり結論に説得力を持たせる概念を加えるように訓練されています。
    • まとめたり、箇条書きにして報告を伝えるのが好ましいようです。
  • 日本やその他のアジア諸国は、特殊な思考法ということで、この指標には載っておりません(下図)

(4)リード(Leading)

  • 権力者に対する経緯や服従が、どの程度見られるかを示します
  • 平等主義」から「階層主義」に至る範囲に各国を位置づけます(一部ホフステッド指数を下敷きにしているとのこと)
  • 平等主義(Egalitarian)」的な人たち(デンマーク、オランダ、スウェーデン)は、上司と部下の理想の距離は近く、序列を飛び越えてコミュニケーションが行われます。フラットな組織が好まれ、人々を平等にまとめるのが理想の上司像とのこと。
  • 階層主義(Hierarchical)」的な人たち(日本、韓国、中国、インド)は、上司と部下の理想の距離は遠く、序列に沿ってコミュニケーションが行われます。組織は多層的であり、先頭に立って部下を導く強い旗振り役が、理想の上司像です。また、肩書きを重要視します。
グローバルビジネス下でのPoint
  • 米国赴任中、上司と部下の関係は非常にフラットだなと思いましたが、下図によると、アメリカ(US)やイギリス(UK)は、真ん中より若干左に位置しており、イメージと少し違う印象でした。デンマークやオランダはさらにフラットなんでしょうかね。

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