【5分で理解するビジネスフレームワーク】アンゾフの成長マトリクス

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 ビジネスを成長させるには様々な方法があります。戦略的経営の父として知られるイゴール・アンゾフ(Igor Ansoff 1918-2002)は、事業の成長・拡大をのための4つの戦略を特定しました。いわゆる「アンゾフの成長マトリクス(Ansoff Matrix)」です。

 このマトリクスを使うことで、経営者は潜在的な成長戦略をすばやく理解し、それぞれに関連するリスクを特定出来ます。

上図がアンゾフの成長マトリクスです。「製品」「市場」「既存」「新規」で4象限に分類し、事業の成長・拡大を検討します。

このマトリクスを用いることで、4つの戦略オプションの潜在的なリスクを考慮しつつ、企業や製品の成長戦略を描いていくことが可能となります。それでは以下で、アンゾフの成長マトリクスを詳しく見ていきましょう。

 ①市場浸透戦略(既存製品×既存市場)

①の象限は「既存製品×既存市場」で「市場浸透戦略」といいます。

  • 既存市場の中で、いかに既存製品の売り上げ・シェアを伸ばしていくか(既存製品の売り上げ拡大)、に焦点が充てられます。
  • リスクが最も低く、ビジネスを展開しやすい戦略です。
  • 具体的には、一人あたりの購買数・購入金額・リピート率等を高める広告を打つのが代表例です。また、以下のようなことを行います。
  • 既存製品への付加価値追加(サービス向上:セット割引、クーポン)
  • 既存製品のコスト削減
  • 物流ネットワークの見直し
  • 既存製品の広告宣伝
  • 既存市場における新規顧客の獲得
  • 例えばコカ・コーラは、マーケットへの浸透のためにマーケティングに注力しており、様々な物流網を駆使して物流コストを抑制しようとします。

②製品開発戦略(既存製品×新規市場)

②の象限は「新規製品×既存市場」で「製品開発戦略」といいます。

  • 既存の市場(顧客)向けに、新規製品を開発する戦略です。
  • 新規商製品(サービス)の開発に際し、研究開発・研究施設・製造設備・従業員など、新たな投資が必要になる可能性があり、リスクは①市場浸透戦略よりも高くなります。
  • 製品開発戦略では、既存製品と関連性の高いもの(関連商品や付属商品)を展開することが有効とされています。また、バージョンアップ製品、既存製品への機能追加が上げられます。
  • 顧客がその会社とだけ取り引きするだけで、関連商品がすべて揃うようになるのが目標になります。例えばAppleのIphone。毎年(または数年おきに)新しいIphoneを投入したり、Iphone shopにIpadやイヤフォン等の関連商品が購入出来ます。

③市場開拓戦略(既存製品×既存市場)

③の象限は「既存製品×新規市場」で「市場開拓戦略」といいます。

  • 既存の製品を、新しい市場(顧客)に、販売していく戦略です。
  • 新しいエリアやターゲット設定等、これまでに開拓・アプローチしていなかった市場(顧客)で戦います。
  • しかしながら、事業の拡大を望める適切な市場を特定していくのは難しく、さらに専門的な調査・分析が必要になります。何が流行るか、戦略をたてるのも難しいでしょう。その意味で、①市場浸透戦略よりもリスクは高くなります。
  • 市場開拓戦略では、地域→全国、日本→海外といったエリア戦略や、女性向け→男性向け、消費者向け→法人向け、子ども向け→大人向けといったターゲット変更戦略があります。
  • 日本の例ではありませんが、CostcoやIKEAはそれぞれアメリカ、スウェーデンで展開していたものを日本でも展開しているので、まさに既存製品を新規市場(アメリカorスウェーデン→日本)で展開ということになります。

④多角化戦略(製品×市場)

④の象限は「新規製品×新規市場」で「多角化戦略」といいます。

  • 新しい市場(顧客)向けの、新商品を開発し販売していく戦略です。
  • これまでに馴染みのない新天地・新たなフィールドへの進出となるため、4つの戦略オプションの中では、最もリスクが高くなります。
  • 一方、メリットとして、自社の既存事業の衰退に備えるためのリスク分散が出来るという見方もあります。
  • 多角化戦略には次の4パターンがあります。

水平型の多角化戦略

 同じ分野で事業を拡大・多角化する方法です。例えば、PC製造メーカーが、プリンターやスキャナーを扱う、自動車メーカーがトラックの生産も行う、清涼飲料水メーカーがワインやウイスキーの製造も行う等が水平型の多角化の代表例です。

 既存事業とのシナジー効果を得やすいのが特徴です。

垂直型の多角化戦略

 VC(バリューチェーン)の上流・下流に多角化する方法です。例えば、石油元売り企業は、原油を中東から調達し国内で精製、ガソリンスタンドや工場に石油製品を届けていますが、まさに上流から下流までの垂直型多角化の代表例です。

集中型の多角化戦略

 既存製品と新規製品をうまく関連づけて新しい市場に多角化する方法です。一見既存の事業とは関わりの薄い新規事業に見えるものの、コア技術や主要顧客などが関連している場合の多角化です。例えば、飲料メーカーが研究開発のノウハウを生かしてバイオ関連の商品を扱うことは、集中型の多角化の代表例です。

集成型の多角化戦略

 現在の製品とは全く関連のない新規事業に多角化する方法です。コングロマリット型多角化とも呼ばれます。自動車メーカーが金融事業や住宅事業に進出したり、韓国のSAMSUNGはコンピューター、電話、冷蔵庫から化学薬品、保険、ホテルチェーンまで、さまざまな事業を展開しています。製品も市場もほとんど既存のものとの関連性がなく、シナジー効果が期待できないため、単一事業としてはリスクが高くなります。

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